インタビュー

熟成肉を極めた格之進の肉おじさん「千葉祐士」氏に熟成肉のお話を聞いて来ました。

とっておきの美味しいお肉屋さんとして知名度が高い「格之進」
1頭買い、雌牛、希少部位、おまかせコース、熟成肉、赤身肉、厚切り、焼き方のレクチャー。
お肉の魅力を最大限に引き出す方法を確立させた千葉祐士氏にお肉に対する情熱を伺ってきました!

千葉祐士(ちばますお)さん

1971年、岩手県一関市生まれ。
1999年より外食事業を展開し、2008年10月に株式会社門崎を設立
門崎熟成肉牛肉販売、卸・食品加工、店舗運営、飲食店運営サポート事業、肉肉学会主宰、全国肉・食連合会会員、牛肉の啓蒙活動を行う。

2004年丑舎格之進 川崎本店、2006年格之進TOKYO(練馬区桜台)、2010年格之進R(六本木)、2013年ミートレストラン格之進(一関)、焼肉のろし(岩手県陸前高田)、2014年肉屋格之進F(六本木アークヒルズサウスタワー)、2015年11月格之進Rt(代々木八幡)、2016年KABCO(六本木)、格之進Neuf(六本木)、2017年格之進Nikutell(六本木)、格之進EX(談合坂SA)をオープン。

お肉の部位は82種類

左:アカヌマカズヤ、右:千葉祐士さん

本日はよろしくお願いいたします。
格之進さんといえば、今では岩手県一関市と首都圏に10数店舗以上もの店舗を構えていますが、元々創業の地は岩手県だったのでしょうか?

千葉祐士(ちばますお)さん

最初の店舗は岩手県一関市です。私は元々一関の出身で、27歳まで東京でフィルムメーカーの営業マンをやっていたのですが、小さい時から自分で商売をやりたいと思っていました。
何か自分でやろうと思っていた頃、たまたま岩手に帰省した際に実家でやっている牧場の手伝いをしていたら、「モウ」って聞こえてきたんです。

モウって?(笑)

千葉祐士(ちばますお)さん

そう。「モウ」って(笑)
これは商売になるかもしれない。牛って牛肉の原料だな。って思い立ちました。牛肉の付加価値が最大に評価される出口とは何かを考えて、「焼肉屋かな?」と思ったんですよ。
「実家が牧場をやっている。焼肉屋をやろう!」と思い立ち即行動に移しました。
27歳で学生の頃から貯めていたお金を全部はたいて一関でお店を作りました。

なるほど。
一関のお店ではどういったお店をやられていたのですか?

千葉祐士(ちばますお)さん

当時、1999年。焼肉が好きだという人に「何か好きなの?」と聞くと大抵「タン、ハラミ、ホルモン」その後に、「カルビとロース」と答えが返ってきました。
タン、ハラミ、ホルモンも内蔵。内蔵以外だと、カルビとロースしか知らないんですよ。
肉は私の定義だと部位が82種類にも分かれるんです。
一関で1999年から牛は1頭買いをしていたので結構大変でした。

当時、1頭買いしているお店は殆どなかったのではないかと思います。

千葉祐士(ちばますお)さん

当時の焼肉屋では使わないようなシキンボウ(後ろ脚、ももの外側の肉が外ももと呼び、その中で最も運動する筋肉が集まっている部位)という部位に隠し包丁で、鱧の骨切りのように細かく包丁を入れて、厚切りのお肉をステーキで出してたのですよ。
そうしたら肉屋の先輩からは「こんなの食えるか!」って怒られました。
でも、隠し包丁入れていたからステーキにしてもお肉は柔らかいし、お客様は喜んで食べてくれました。
通常は挽肉に使うようなお肉を、焼肉用に何度も試してみたりと試行錯誤していたんです。

その時代から隠し包丁を入れた肉をしかも岩手県で出していたなんて本当に驚きです。

千葉祐士(ちばますお)さん

今流行っていることはその頃に殆どやっていました。
1頭買いして雌しか使わずに、当時はそういう言い方しなかったけど希少部位も使って、それをお任せコースで出すお店でした。
カルビとロースしか知らないお客様に、82種ある部位をちゃんと説明して出すんです。
予算を言ってもらい、その値段でコースを作って、値段以上のものを出すスタンスです。
お客様の8割以上はおまかせコースでした。
「私に任せられないんだったら、私のとこにはこなくていい。」って思いながらやっていました。
そうしたら自然と地元の人以外にも、仙台とか東京から定期的に来てくれる人達が増えてきたんです。

熟成肉の誕生秘話

なるほど。時代を先取りされていたのですね。
格之進さんといえば熟成肉のイメージが強いのですが、最初から熟成肉だった訳ではないですよね?

千葉祐士(ちばますお)さん

これはね。簡単にいうと、熟成になっちゃったんですよ。
業績不振のお陰で熟成肉なっちゃった(笑)
なんでそれが出来たかって言うと1頭買いしていたからなんです。
一日の売上がどんなに悪くても、1頭買いをしていました。
牛を買って、ある部位を頭の方から食べ始め、次に仕入れたお肉は何かのはずみで逆から食べてみたことがあったんです。
そうしたら、同じ部位のはずなのに「あれ?」ってなったんです。

「なんでこんなに味が違うんだろう」

周りの色んな人に聞いてもみんなわからないんです。
ずっと考えていて、あぁ屠畜してからの時間だ。と気がつきました。
同じ部位でも、屠畜してからの時間によって味わいが全く違う事に気がついた事が格之進の熟成肉の原点です。

凄い!
よくそこに気づかれましたね!

千葉祐士(ちばますお)さん

気がついちゃったんですよ。
時間が経つと本当に肉が美味いんです。
色々テストをして、意識的に変えたらどんどん美味くなっていったんです。
テストのためにパーツで買って、時間をおいて。本当に試行錯誤しました。
そしたら肉がどんどん美味しくなっていくんです。
熟成肉は17年前。2002年に確立しました。
まだそんな言葉は無かったと思うのですが、その時からもう熟成って言っていましたね。

熟成肉ブームの10年以上前から熟成肉を確立されていたとは驚きです。
その後は順調だったんですか?

千葉祐士(ちばますお)さん

実は問題が起きました。
某大手の食品加工会社で賞味期限の偽装問題が発覚して、問屋さんも賞味期限ギリギリの食材は販売しなくなりました。
せっかく美味しくなる方法を確立したのですが・・・

食品業界全般が賞味期限にデリケートになったタイミングでしたね。

千葉祐士(ちばますお)さん

お肉の賞味期限問題。
ルールを守りながらお肉を美味しくするためにはどうしたらいいのかを半年間考え続けました。
で、気が付いたんです。要は、お肉の賞味期限って骨から外した日から45日って決まってるんですよ。
だったら、骨のまま熟成させればいい。
私の以前の計算だと60日が一番美味くなっていたんです。
骨から肉を外さないよう何とか頼み込んで問屋さんにお願いをしていたのですが、その当時スーパーなどの卸先は見た目で買うので長く置くなんて問屋は絶対にやらない。
それをなんとかお願いをして、文句をガンガン言われながらも長く置いてもらっていた。「カビてきたぞ」と文句を言われたこともありました。
しかしその後、何とか安定してやってくれるところがやっと見つかりまして、それが今のベースです。
そちらの会社と信頼関係が出来て、ものすごく安定した高レベルの熟成が出来るようになりました。

まさに熟成肉の誕生秘話ですね!
今では多くの肉を扱う業者やお店が熟成肉を提供していますが、それについてはどう思われていますか?

格之進の熟成肉

千葉祐士(ちばますお)さん

格之進の熟成肉は他のお店の熟成肉と食べ比べていただくと違いがわかると思います。何故かというと全く理論が違うからです。
熟成を看板にしてやりたいわけでも何でもない。
熟成というのはお肉の可能性や、お肉の能力を最大にする中間作業の一つだからです。

こんなにも素晴らしいお肉の表情、奥行きを伝えたい。
格之進では美味しいお肉を出すためのゴールを考えてからプロセスを踏んでいます。

お肉に真摯に向き合い、最大限の美味しさを引き出すために独自性のある塊肉をカットします。
そのために一次熟成をし、店舗で保管をしながら美味しくするために二次熟成をさせます。
そのためには熟成肉に合う枝肉を仕入れます。

格之進では全部一気通貫している。お肉に真摯に向き合い、この工程があるからこの味が出せます。

なるほど。熟成ありきではなくて、あくまでもプロセスの一貫なのですね。

千葉祐士(ちばますお)さん

そう。
お肉の旨味が強くなるという工程の中に熟成が入っているというだけで、熟成をやりたい訳ではないのですよ。

一気通貫の素晴らしいモデルですね。
熟成肉を売っている他のお店と全く違う事がよくわかりました。

千葉祐士(ちばますお)さん

熟成の中の一番の決め手は、枝肉熟成だから。最近よく言われる「熟成香」は意識していません。

格之進の焼肉のタレ

1頭買い。雌牛。希少部位。おまかせコース。赤身肉。厚切り。
15年以上前に現在の流行を取り入れていたのは本当に驚きですね。
これは流行らないはずがないですね。

千葉祐士(ちばますお)さん

でもね。実は焼肉のタレの評価が悪かった。
地元の人達には、肉は美味いけどタレがまずいってずっと言われてました。
今でも言われていると思うくらい(笑)
一時期、タレをずっと研究していました。
それである時分かった。すっごく深くわかった。

焼肉といったらこの味と浸透させた歴史ある韓国系の焼肉屋さんがあったんです。
私はそこの真似をしているんだって事に気がつきました。
どこまで頑張っても真似でしかないので評価されないんだ。
人の土俵に乗っていたんだ、土俵は自分で作らなきゃダメなんだって事に気がつきました。
格之進は、生産者が明確になっている牛を1頭で使う。82の様々な部位を使う。
これを活かすためには、塩コショウとわさび醤油で食べてもらうことが一番。
それで17年前からこのスタイルになりました。

簡単に言うとブルーオーシャンというか土俵を作って、私にしか出来ないことを意識し大切に考えて、私にしか出来ないことを組み上げていくことを目標にしています。

格之進のコダワリ

物凄いこだわりと、先見の明を感じますが、そこまでこだわって研究をされていたのであれば競合他社というか、他の焼肉業態とかお肉を扱うお店のことを当時どのように見られていたのかが気になります。

千葉祐士(ちばますお)さん

実際、黒毛和牛をひたすら突き詰めていたからこそ否定をしていた時期はありました。
なんでこんな脂に?色に?甘味に?とにかく研究をして突き詰めていた。
和牛の活かし方とか、そういうことを極めていった。
そんな時に、某ファミリーレストランのコンサルティングを頼まれたことがあり、そちらの和牛を扱う方達を否定していた時期がありました。
全然わかってないなって。
なんでこんな切り方しているんだ。
なんでこんなタレにしているんだ。
なんでこんな扱い方をしてるんだ。

そのように現場の人達を否定していた。しかしやってみたらお恥ずかしい話、私の言った通りでやっても売上が伸びなかったのですよ。
飲食店は味だけを求めてくるところではない。
場所や雰囲気、目的によってリピートするお店の分岐点が違うということを学びました。
その時に、自分の考え方がいかに狭いかがわかり、牛肉の領域の中で私が持っている「こだわり」とか「思い」は小さいことだと気がつきました。
それよりも、お客様がどう感じて、どのように喜んでもらえるのか。という方向にシフトしていきました。

今日は格之進さんの人気と美味しさ、そしてこだわりについて深く知ることが出来ました。
ありがとうございました!

格之進Rt (カクノシンアールティー)

住所
東京都渋谷区富ヶ谷1-9-20 エスペランサ代々木 C2F
電話番号
03-6804-9629
URL
http://kakunosh.in/

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この記事の執筆者

FOODee編集長 アカヌマカズヤ

FOODee編集長 アカヌマカズヤ

FOODee編集長。フードブロガー。
株式会社BNF 代表取締役。
元IT会社の経営者。
熟成寿司専門店 優雅、Cafe & BAR BellB の経営、飲食業界専門のクラウドファンディング Foobee の経営。

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